
名盤と呼ばれるダブテクノトラックは何でしょう。
それは2014年、UKの強い影響力を持つ音楽メディアFact Magazineによってもたらされました。
内容はコチラから→「歴代最高のダブ・テクノ・トラック 25選 (“The 25 best dub techno tracks of all time” BY , MAY 21 2014) 」
ソース→https://www.factmag.com/2014/05/21/the-25-best-dub-techno-tracks-of-all-time/
オリジナルは英語ですので、翻訳しつつ解説を交えながら独自の視点も交えてご紹介したいと思います。
歴代最高のダブテクノ25選
結局のところ、従来のダブの手法から発展したと言っても無骨なロックバンドやギターサウンド、ありきたりなミニマルの文脈のような飽きっぽいエフェクトとミックスの常套句はもうつまらない。
じゃあテープエコーをかけろよ。と言ってもギターノイズから脱却するにはテクノしかない。もちろん私(Altone aka Yuki Takasaki)もそう思う。それでも事が始まったのは1990年の事で、その頃はラップトップでのシームレスなトラップメイクは愚か、CD-Jでさえ存在しなかっただろう。
ただ、ドイツはベルリンにあるレコードショップHard Waxでは、当時そこで仕事をしていたErnestusとvon Oswaldがデトロイトで盛り上がるテクノの潮流を感じながらより強力なエコーとリヴァーブ、ディレイを前面に押し出したミニマルテクノ、ウェアハウスなサウンドを作り出していたのはまだ90年代初頭のこと。
最初は彼ら自身のBasic ChannelとMaurizioの12インチをリリースしてChain Reactionというレーベルを設立し、Hard Waxに流通させた(その時にはMonolakeやVainqueurなど後に伝説となるアーティストが集結していたのだ)
すごくフレッシュになったサウンドはその後、Stefan BetkeやJan Jelinek、さらにジャズにリミックスしたKrautrock。Rhythm&Soundとして本格的なレゲエレコードを作り上げ、そしてBasic Channelが一つのブランドとして確立されていくのである。
それからシカゴのDeepChordクルー、スウェーデンのAndreas Tillianderに伝わり、少しづつ形を変えていくダブテクノがその後20年余りかけて進化を遂げ、また変わらず響かせているエフェクトワークの真髄を垣間見たいと思う。
※以下ランキングはリリース順。一部Fact Magazineから引用。
Maurizio – Eleye (Maurizio、1992)
1992年Mark ErnestusとMoritz von OswaldのユニットMaurizioが最初にリリースしたのはアンダーグラウンド・レジスタンスの魅力的なリードシンセから強い影響を受けたPloyという1曲。その後、ダブテクノというジャンルに到達し得たある種の完成系と言われるのがコチラのトラック。
シャープにかかるコンプレッサーと暖かいローピッチのオルガンストリングス、そして808サウンドを思わせるビートメイクはまだDetroitテクノの文脈を引き継いでいます。
レゾナンス強めのハイループとタムロールのフィル、上モノの飛び道具ノイズからはスモーキーでダビーな雰囲気を感じる事ができます。
Basic Channel – Lyot rmx (Basic Channel, 1993)
VainquerのトラックLyotをBasic ChannelとしてリミックスしたのがBasic Channelとしてのファーストプリントになります。この頃はまだErnestusとvon Oswaldとしてはミニマルテクノと呼んでいましたが、すでにこの時にはダブテクノとしての流れが形作られていたように思います。
ベルトドラムと抑圧されたエフェクトナイズなシンセループは魔術的でサイケデリックでありながら、背景でコードを作るウォームなパッドが美しい世界を構築しています。
また、ヴァイナルのプリント部分には放射状に”Basic Channel”と書かれており、これが代表的なロゴマークとして今後使われていきました。
Mono Junk – Channel B (Trope Recordings, 1995)
フィンランドのプロデューサーKimmo Rapatti(aka Mono Junk)は、当時こそあまり話題にはなりませんでしたが、飽くまでミニマルテクノとしてリリースされたこの作品はその実験性の高さと美しくストイックなシンセループがダブテクノ名盤の1つとして数えられています。
アタック弱めのパーカッションと、抑えられたキック、8分のハットワークはDetroit的ではありますが、スタブのエコーやフィルターワーク、控え目ながらしっかりと世界を支えているリヴァーブの妙はいつまでも聞いていられる反復性、中毒性を持っています。
Model 500 – Starlight (Moritz Mix) (Metroplex, 1995)
MetroplexはDetroitテクノの帝王Juan Atkinsが1985年に設立したレーベルですが、すでにこの時von OswaldはJuanと仕事をしていました。※Model500とはJuan Atkins, Mike Banks, DJ Skurge & Mark Taylorの共同名義です。
またThomas Fehlmannとの3人でTresorに3MBとしてクレジットされており、リリースがだいぶ遅れたとの話もありますがこの時すでにこのディープな世界観が存在していたと思うと驚嘆します。
Detroitの有曲をことごとくダブ処理していく職人的技巧とこだわりは、ビートを抑え、フィルターパッドやリードでグルーヴを刻んでいく事が可能だと、十分に証明できていると思います。
Schizophrenia – Schizophrenia (NovaMute, 1995)
Thomas FehlmannとMoritz von Oswaldによる短期間のプロジェクトであり、Schizophrenia = ‘統合失調症’と名づけられたこのトラックはTresorの3番、ラストトラックに収録されています。
9分近いトランシーなロングトラックはビートが使われておらず、ひらすら浮遊するシンセのループはスティーブ・ライヒを思わせるような反復と回帰、開放的なコード進行の緩やかな変化は、現代のミニマルの1つの解を提示しているように思います。
Burger/Ink – Twelve Miles High (Harvest, 1996)
Ernestusとvon Oswaldの影響は90年代半ばで急速に普及し、Jörg BurgerとWolfgang Voigtのデュオはしっかりと彼らのヒスノイズやテープエコーを踏襲し、このトラックはそれを初期の段階でより遊び、より実験している貴重な一例ではないでしょうか。
4分のキック、スネアから離れ、16ビートのハットとスタブで引っ張っていく10分間は完全なるミニマルであり、ダブテクノなのです。
Porter Ricks – Nautical Dub (Chain Reaction, 1996)
アンビエントミュージックのパイオニアであるThomas KonerとエンジニアのAndy Mellwigからなる、ダブテクノ史における最重要作品の1つ、個人的には人生ダブテクノベスト3に入るくらいの大好きなトラック、Porter RicksのデビューデビューアルバムBiokineticsから(本当はNautical Dubが一番好きだけど)
キツイフィルター処理とディレイ、地を這うようなベースライン、ミニマルに反復するノイズタムやハット、シューゲイザー的な不思議な浮遊感をもつノイズがモノクロな無機質さと、どこか有機的な変化を思わせるアートといった印象です。
イコライジングが特に秀逸で、音像を時に攻撃的に、時に丸みをつける彫刻家のようなデザインは何度聞いても惚れ惚れします。
Dynamo – Killed By A Feedback (DIN, 1996)
数々の名義を使い分け今尚コアなシーンにおいて重要な役割を担っているTorstenPröfrock、元はHard Waxのクランとして活躍していましたが、その実験的でユニークなスタイルはジャンルの垣根を超え、ダンスシーンからアンビエント、エレクトロに到るまで様々な表情を持っています。
とはいえしっかりとプレートリヴァーブを効かせて残響による増幅で音の厚みを増し、じわじわと変形していくスタブワークはやはりミニマルなんですね。
昨今のEDMのようにコンプによる音圧の底上げで全ての音が分け隔てなくはっきりと鼓膜を叩いてくる様相と異なり、残響やフェードアウトした後の耳残りの良いフレーズやコード感が心地よく、時間が誇張されていくようなトランシーさに陶酔できるのが、ミニマルの素晴らしいところかと思います。
Vainqueur – Elevation (Version 1) (Chain Reaction, 1996)
キマした。大本命Vainqueur(aka René Löwe), Chain Reactionに置ける最重要人物。
15分に渡るアトモスフィア、ノイズかと思ってしまうようなハイパスバキバキのハイレゾシンセが歪み、ディケイがうねり、リリースが開いていく。
突如現れるスタブ、コード感が現れて、ハイレゾシンセのテンションをあげいきます。オートフィルターでしょうか、ぐわんぐわんと嵐のようにループがかき消されながら、追いかけずにはいられないフレーズの妙。ミニマルの1つの到達点がここに存在しています。
ビートを乗せないジレンマとカタルシスが逆に高揚させ、気づくとまたもやバギバギのストリングスがフェードインしてきている。まさにダブテクノ。本物です。
陶酔しましょう。
Monolake – Occam (DIN, 1997)
かのAbletonの創設者Gerhard BehlesとRobert HenkeはMonolakeとして、ローファイなサウンドによりテクニカルなダンサブルでエレクトリックなビートを加えました。
Ableton LIVEの共同開発者として、現在Henkeの方はAbletonから少し離れてはいますが、ドイツの名門レーベルDINから放たれた非常に凝ったディテールや構成、緻密さは当時革新的な者としてデジタルミュージックシーンに話題を呼びました。
テクニカルな部分は今聞くとややチープに思えてしまわなくもないですが、細かいフィルターの処理やイコライジング、グラニュラー系の使い方には学ぶべきところが多い教科書的な作品かと思います。
後半へ続く
以上全25作品の中から前半の10トラックを紹介しました。
後半へのリンクはこちらから↓

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