
ダブテクノ(Dubtechno)と呼ばれるジャンルがあります。
現在は北欧、ロシアなどを中心としたアンダーグラウンドな音楽シーンの中に確かにあるダンスミュージックのジャンルの1つです。
比較的ニッチなシーンであるため、あまり詳しく解説した記事やこれと言って決まった製作手法があるわけではありませんが、
その深く霧がかったリバーヴやエコーサウンドには、どこか自然的で宇宙的な広がりのある美しい印象を受けます。
ダブテクノの発祥
ダブテクノの始まりは
1993年ドイツはベルリンにて、MARK ERNESTUS(マーク・エルネスタス)とMORITZ VON OSWALD(モーリッツ・ヴァン・オズワルド※別名義でMaurizio、元パレ・シャンブルグ)が「BASIC CHANNEL」というレーベルを設立したことに始まります。
※現在レーベルとしての活動はほぼ休止状態ですが、まだサイトは機能しています。
BASIC CHANNELはその後多くのトラックメイカーが参加し、Chain reactionやRhythm&Soundなど、後に伝説となる数々のコンセプト、サブレーベルを立ち上げながらじわじわとファンを拡大していきます。
その凄まじくストイックでミニマル、ノイジーかつビッグルーム向けの重厚なサウンドは20年以上経った今でも全く色褪せない音でなお多くのファンを魅了させ続けています。
日本では「ベーチャン(ベーシックチャンネルの略)」と言えば解る人には伝わります(笑)
とりあえず「ダブテクノって何?」という方はBASIC CHANNELを聞いてみてください。ココに全てが詰まっています。原点ですね。
ダブ+テクノ
1960年代にレゲエのレコーディングエンジニアがボーカル抜きのトラックに様々な空間系エフェクトをかけ、別のバージョンとして作成したのがレゲエにおけるダブの発祥だと言われています。※別の説もあるようですが、、
この”ダブ処理”はその後70年代に入り、古くなってしまったレコード音源や、当時の旧式のサウンドシステムでは弱かった音圧を底上げし、よりダンサブルで大仰にリミックスするために多用され、レゲエ以外にもテクノ、ハウス、アンビエントやエレクトロニカのトラックメイカー、エンジニアにも広く使われるようになっていきました。
BASIC CHANNELのクルーは、レゲエやミニマルの反復性やディレイエフェクトによる遅延性を用いた新しいジャンル”ダブテクノ”を模索していきます。
反響を重視し、スタブ(シンセサイザーのリフやループ、パッド音など)のテクスチャーにどこまでもこだわり、テープにトラックを一度流してホワイトノイズを作り出す手法や、ディレイを幾つも重ねるような巧妙なトリックが、未だ彼らを超えることのできないオリジナリティを生み出すことに成功しました。
※ThumpのプロデューサーJosh Bainesは、初期のChain ReactionやBASIC CHANNELにおいてもレゲエのルーツを汎用したトラックもいくつかリリースしています。
その後、1993年ドイツのフランクフルトにてAchim Szepanskiが設立したエレクトロニカレーベルMille Plateauxに、グリッチ音楽や実験音楽、最小限のミニマルスタイルとして伝わり、さらにDeepchord(Mike Schommerとの共同プロジェクトでもある)ことRod modellがデトロイトテクノとミックスすることで、アメリカ合衆国へと渡っていくことになります。
【代表的なダブテクノレーベル】
運営休止中のBASIC CHANNELを除き、世界には3つの代表的なダブテクノレーベルが存在します。
まず、デトロイトを拠点とするDeepchord(Rod modell)が率いるクローズドな雰囲気が魅力的なechospace。
宇宙的広がりのあるうねるシンセのフィルター具合やドローン的ノイズアンビエント的なトラックが多いことが特徴です。
実験的音楽としても評価が高くその美しいトラック群は息をするのを忘れてしまうほど。
Echocordは2001年デンマーク、コペンハーゲンにてKenneth Christiansenが設立したレーベルで、Mikkel Metal、Deadbeat、Luke Hess、Brendon Moeller、Fluxionなどがリリースを行った超名門レーベルです。
ご存知kompaktが流通を請け負っていますから、影響力も多大です。
オンラインレーベルのBoomkat傘下のModernLoveは、2002年にイングランド、マンチェスターで設立されました。
UK風味のひねくれていて実験的なグリッチ、IDM要素もありながら硬質なミニマルトラックも多く、一括りにダブテクノレーベルとは呼べないほどの要素を多く含んでいます。
↓新旧、名門から新鋭までレーベルをズラッとまとめました。
【ダブテクノ(Dubtechno)系レーベルまとめ。Digital~Vinyl】
https://0-signal.com/2019/07/15/label-matome/
【代表的なダブテクノアーティスト】
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- Andy Stott
- Basic Channel (aka Maurizio and Rhythm & Sound)
- Brendon Moeller, (aka Echologist and Beat Pharmacy)
- Deadbeat
- Deepchord
- Echospace, (aka cv313)
- Fluxion
- Grad_U
- Gradient
- Heavenchord
- Idealist
- Leftfield
- Luke Hess
- M-Eject
- Marco Cassanelli
- Matthias Schildger
- Mikkel metal
- Monolake
- Mr. Cloudy
- Pole
- Porter Ricks
- Quantec
- Resoe aka Dennis Uprock
- Star Dub
- Yagya
- Vladislav Delay
※A→Z
現在のダブテクノ
元々、ダブテクノにはそれ特有の反復感や、空間エフェクトを多用したダビーで霧がかったサウンドは自然的で、都会の人工的な煌めきや、シティセンス、パーティー感はあまりありません。
アッパーなグルーヴ感を持ったトラックも少なくBPMも120を切ってしまうようなダウンテンポ寄りのトラックも多いため、時にはアンビエントやチルアウト、ドローンに混ざりあうような淡く優しいフォーマットであることが多いです。
また個人的な感覚ではマイナーコードの方が多く、美しさの中にも孤独や陰鬱さ、リフやパッドでリードするわけでなくクリックノイズやホワイトノイズで引っ張っていく楽曲には、ヨーロッパの特に寒い地方、北欧や東欧、ロシアのシーンにて盛り上がっている印象を受けます。
ロシア近隣諸国にはデジタル配信のみのレーベルが乱立しており追うのが大変ですが、SNSや配信プラットフォームの進化に伴いキュレーションもしやすくなっています。
ロシアの老舗ネットラジオDeep Mix MoscowではレジデントDJのAndrey Pushkarevが良質なロシアンダブテクノをプレイしていますし、Hello strangeやCold tear、Deep electronics、など新進気鋭の個性を持ったレーベルが多く、若手のトラックメイカーがこぞって各レーベルからリリースしやすい環境が整っています。
また、最近ではDI(Digitaly Imported)を中心としたネットラジオ群や、Spotify、Beatportなどの各音楽配信プラットフォームに”Deep tech”や”Deep techno”というジャンルが確立され始めたことから、少しづつメインストリームにも浮上してきた感じはします。
Writer:Yuki Takasaki (Altone)
